統合失調症
脳の神経のバランスが乱れやすくなる慢性の病気ですが、この病気にかかると社会生活を送れないような誤解がかつては広まっていたため病名が変わりました。そんなことはありません。糖尿病や高血圧のように、服薬を続けたり生活上の注意は必要ですが、その上で仕事や子育てなどをしながら地域で生活している方達を何人も支援してきました。以前保健所で講演したスライドの内容を以下に記載いたします。
統合失調症とは?
脳の神経のバランスが乱れやすくなる病気
乱れた結果色々な症状が出る、環境からの刺激に過敏になり過ぎ混乱しやすい。
慢性の病気
糖尿病や高血圧のようにうまく付き合うのが目標、時に障害が残ることもあるが健康的な部分を伸ばす、活かす。
遺伝や本人の性格、育て方など一つの原因ではならない
原因探しは意味がない。
病気について本人・家族が理解することで対処がうまくなることも多い
昔の病名は偏見・誤解が多かった
地域で生活している方は案外多い。
どのくらいの人がなるのでしょう?
およそ100人に一人、10代~30代の比較的若い世代で発症することが多い。
性別や地域、人種によって発病率に大きな違いはない→育て方や文化はあまり関係ない。
具体的な症状
- 夜眠れなくなる
- イライラしたり怒りっぽくなる
- 考えがうまくまとまらない
- その場にいない人の声が聞こえてくる(幻聴)
- 色々な思い込みにとらわれる(妄想)(狙われている、監視されている、自分は世界に影響を与えている、など)
- 気分が落ち込む、人と話したり何かする気がなくなる
- 部屋に閉じこもる
- 疑り深くなる
- 食事を取らなくなる
- 身だしなみが乱れる
- 落ち着きなくよく喋る
- ひとり言やひとり笑いが多くなる
- 自分が頭で考えたことが周りに筒抜けになる
- 頭の外から考えが入ってくる
- 頭から自分の考えが抜き取られてしまう
病気の経過
前兆期
何となく過敏、苛々、眠れない。
急性期
幻覚や妄想、不安や興奮、混乱など激しい症状(入院が必要になるのはこの時期が多い)。
消耗期(休息期)
疲れてだるい、あまりやる気が出ない。
回復期
少しずつ興味や活動の幅が増えてくる。
なるべく回復期の状態を維持できることが理想。
治療とは?
薬物療法と心理社会的療法・リハビリテーションの二本柱。
- 薬の作用で脳の神経のバランスを整えて眠れるように、緊張を和らげたり落ち着きを取り戻す。
- 病気や対処の仕方について学ぶ、生活リズムを整える、コミュニケーションや活動の練習。
健康的でストレスの少ない生活の維持も大事。
薬物療法
・抗精神病薬という脳の神経のバランスを整える薬が主役。
昔からある第1世代、近年開発された第2世代。それぞれの持ち味、長所短所がある。
・それに加えて睡眠薬や副作用止め、気分の波を和らげる薬(気分調整剤)や不安・緊張を和らげる薬(抗不安薬)を組み合わせて使うことが多い。
・抗精神病薬には錠剤以外にも粉薬、液体の薬、効果が数週持続する注射、など色々なタイプがある。
・長くのみ続ける必要があるので量や種類を調節して続けやすい処方で(具合悪い時は多い量、回数が必要。調子が良い時は少量、少ない回数でいいことも)。
・残念ながら副作用の危険性が全くない薬は存在しない。
・抗精神病薬などに特有の代表的な副作用は、眠気、口が渇く、便秘、食欲が増す、舌がもつれる、手が震える、足がムズムズしてじっとしていられない、立ちくらみ、生理不順など。
・量や種類の調節、副作用止めの併用などで軽減できることも多い。
・病状悪化の予防には合った処方をなるべく長期間続けること(悪化のリスクが1/4ぐらいに下がる)。
・薬をやめることが目標ではなく、上手に薬を使って出来るだけその人らしい生きることを目指すのが目標。
→そのためにも薬についての意見や不安、不満は遠慮なく主治医に相談を。
入院治療
・急性期の症状が激しく家では休めない時は入院が必要。
・保護された環境で安全に休養、集中的な薬物療法や病気についての説明、家族の休養、退院後の生活についての相談。
・人権についてもちゃんと配慮されています。
・医師、看護師、心理士、作業療法士、薬剤師、相談員など多職種チームで患者さん、ご家族をサポートします。
ご家族にできること
病気や治療について正しい情報を得ること(何か分かれば不安や恐怖が減る)
必要な制度や施設も利用する、相談できる人や場所を持つ。
日々の対処の工夫
- 心配し過ぎて過干渉や批判し過ぎるとお互いにストレスになる。
- 幻聴は否定も肯定もしないけれど辛さには共感。
- 応援してるよ、見守っているよ、というメッセージ。
- 回復には時間がかかるのでご家族も焦らない。
- 小さな良い点、出来ていることを評価。
- 注意しないといけないこと(金銭管理・暴力など)については具体的に、分かりやすく。
- I-メッセージの言葉かけ
「~してくれると私は嬉しい」。 - 調子悪そうな時は早めの主治医への相談を勧める。
ご家族自身のストレス対処
・ご家族自身が疲れ過ぎず気持ちや生活のゆとりを持つことは本人の治療にとても重要。
→相談できる人や場所を持つ。
・ご自身の生活を犠牲にし過ぎない、疲れたら休む、気分転換やストレス発散など自分のための時間も大事。
・周囲に援助を求めていい。
・究極は本人の人生、腹をくくったりある程度の諦めが必要なことも。
利用できる制度や施設は色々あります
経済的負担を軽減する制度
自立支援医療、精神保健福祉手帳、障害年金など
レクリエーション、リハビリ、就労を目指す場
デイケア、作業所・就労支援施設
訪問でのサポート
訪問看護、ホームヘルパー
自立に向けた生活の場
グループホーム、援護寮など
ご家族が悩みを分かち合う場
家族会
ご本人、ご家族が病気について理解され、必要な治療や援助を利用してより良くご自分たちらしい生活を送られることを応援しています。